大阪大学サイエンス・テクノロジー・アントレプレナーシップ・ラボラトリー

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質量分析プロジェクト

プロジェクトリーダー: 豊田 岐聡 教授

 理学研究科質量分析グループでは,1990年代後半から,豊田らが中心となって,マルチターン飛行時間型質量分析計を開発している.一般に飛行時間型質量分析計の質量分解能m/Δm(どれだけ近い質量を分けることができるか)は飛行距離に比例するため,高分解能を得ようとすると,装置が大きくなってしまうという問題点があった.マルチターン飛行時間型質量分析計は,イオンを同一飛行空間を多重周回させることで飛行距離をかせぎ,小型の装置でありながら,非常に高い質量分解能を得ることができるという特長をもっている.一号機のMULTUM Linear plusでは,分析部の大きさが40cm四方と小型でありながら,質量分解能35万という飛行時間型の世界最高分解能を達成している,市販されている飛行時間型質量分析計の分解能は1~2万程度であり,マルチターン飛行時間型質量分析計は小型でありながら一桁以上高い分解能を得ることができている.


 さらに,簡略化した光学系を採用した二号機MULTUM IIでは,ペプチドなどの生体高分子の測定にも有用であることを示している.さらに,タンデム飛行時間型質量分析計にしてMS/MS測定が可能なMULTUM-TOF/TOFや,イメージング質量分析計であるMULTUM-IMGなども開発してきている.さらには,MULTUM IIの半分サイズの装置MULTUM-Sも学内の汎用工作機械を利用して試作し,20cm四方と小型であっても多重周回させ高分解能が得られることを示している.これらの成果は,世界的にも非常に高い評価を得ており,国際質量分析学会ブルネー賞や文部科学大臣表彰若手科学者賞などを受賞している.


 平成19年度からJST大学発ベンチャー創出推進プロジェクトに採択され,MULTUM-Sのイオン光学系をベースに,真空排気系や電源なども含めた装置全体の小型化,高精度な加工技術の構築,高速デジタル信号処理技術の構築,制御システム/ソフトウェアの構築などの製品化に向けた開発を行い,このプロジェクトの成果として,大阪大学発ベンチャー企業MSI.TOKYO株式会社を平成20年度から起業しており,製品infiTOFの販売を行なっている.infiTOFは,真空排気系や制御系を全て含め,少し大きめのデスクトップパソコン程度(50cm×60cm×30cm以下)で,重量は35kg以下と,持ち運びも可能な設計になっている.質量分解能は3万以上が達成可能である.ほとんどの分析機器がそうであるように,質量分析計の性能(分解能)は大きさに比例すると言われているが,我々の装置は,非常にコンパクトでありながら,従来なら5m四方程度のスペースが必要であったような装置に匹敵する高分解能が得られる.


 この装置の特長を活かせば,様々な分野での幅広い利用が考えられる.例えば,空港での爆発物の検査や,税関などでの違法薬物の取り締まり,火災現場やテロ現場などでの有毒ガスや危険物質の検知,食品の残留農薬のスクリーニング,温暖化ガスの常時モニターなど,これまで質量分析装置が活躍してきた専門の研究機関だけではなく,現場(オンサイト)に持ち出しての使用も考えられ,今後様々な応用分野での幅広い使用が考えられる.


 しかしながら,このような新しい分野への応用のためには,これまでの分析の既成概念を大きく変えるような,試料のサンプリング方法,前処理方法,測定方法,データの処理方法などを構築する必要がある.このような研究は,質量分析装置開発者だけで行なえるものではなく,実際にニーズをもっているユーザーや,サンプリング方法や前処理法などの技術をもっている研究者などと,お互いのニーズ,シーズを相互によく理解した上で共に検討/開発を進めていくことが必要である.大阪大学には,質量分析装置開発者,応用研究者,さらには質量分析にとって重要な前処理や前段での分離技術に関する研究者,装置制御やソフトウェア開発者などが数多くいる.これまで,これらの研究者が一堂に会して,研究科/専攻/研究室の壁を取り払って,1つの目的のために研究を進めて行くということはなかなかできなかった.そこで本プロジェクトで,e-squareに研究拠点を設け,マルチターン飛行時間型質量分析計を核とし,学内(学外)のニーズ/シーズを融合した分野横断型の研究を推進し,「オンサイトマススペクトロメトリー」という新しい学問分野の創出と,研究・開発成果の社会への還元を目指す.

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